一カ月ほど前から、私たちの暮らしは急にあわただしくなりました。たぶん、誰でもどこでもあることでしょうね。私たちの場合、主な原因はパチャの身に一度にいろんなことが起こったことなのです。彼女が将来に向けた選択をしようとしている今、もう少し「まじめに」なる必要が出てきていると感じました。
ひと月ほど前、パチャの14回目の誕生日のすぐあとに、Instagramを通じてコカ・コーラのマーケティングを担当する企業の代表だという人がパチャにコンタクトしてきたのです。パチャのInstagramは今、10,000人を超えるフォロワーがついています。@pachalight で検索してみてください。マーケティング会社の代表はパチャに、キャンペーンとの「コラボレーション」を打診してきたのです。彼女は「ソーシャルインフルエンサー」だというのです。何のことかわからず、私は言葉の意味を調べました。
このことは私とパチャのどちらにとってもちょっとした事件でした。過去にもパチャにコンタクトしてきた企業はありましたが、コカ・コーラ社はずいぶんな大企業です。世界中、知らない人はいないほどの大企業であり、砂糖がたっぷり入った飲み物を販売して巨額の利益を上げています。
(嫌なイメージが頭の中で回っていました。ボルネオのジャングルの一番奥で見つけたコカ・コーラの空缶。どこから出発しても歩いて二日かかるアマゾンのジャングルの奥へ、コカ・コーラを満載したトラックがくねくねとした未舗装の道をわけ入ります。そこでは地球上の最も貴重な森林から真っ黒な原油が汲みだされているのです。私はあの企業の民営化策を知っています。地域のコミュニティに、彼らの土地で組み上げられた水をペットボトルに詰めて、それを買うよう仕向けるのです。人類の、そして労働者の権利を踏みにじる行いです。とはいえ、蒸し暑いジャングルの中、山道を二時間かけて登ったあとに、よく冷えたあの飲み物を出されたらどんなに美味しいか。大都市に輝く巨大なロゴのネオンサイン、世界中の辺境の地にまでちりばめられた小型のネオンサインやポスター。思い起こされることは山ほどありました。)
「コラボレーション」するというのはどういうことなのか、私たちは悩みました。そして、パチャがコカ・コーラの新商品をさりげなく、でも「真摯に」アピールする写真をInstagramに投稿すると、それに対価が支払われるのだろうという結論に至りました。
こんな風にパチャといろいろな考えをシェアし、これを機に彼女がソーシャルメディア上で発表する意見や画像にこめるアイデンティティやメッセージについて話し合うことができてよかったと思います。パチャを取り巻く、消費者志向のライフスタイルを推進する社会的圧力や、若い女性が「かわいさ」や「色気」でしか価値を認められない社会状況の中で、発言するのは重責を伴います。
私たちは貧しく、パチャが夢を実現する助けになるものなら必死に掴み取らなければいけないのですが、清涼飲料水の販促に手を貸すことは選択肢にありません。
彼女がマーケティング会社に宛てた返信の一部を引用します。
「私はこの件について母とたくさん話し合いをしました。そして今は、コカ・コーラ社とコラボする時期ではないという結論に達しました。
私は自分というものについて分かり始めたばかりですし、私のInstagramへの投稿がどのような影響を持つかも未知数です。自分に正直であること、自分の信念、そして私の家族が清涼飲料水を飲まないということは重要です。だから販売促進に協力するのは不自然だと思います。」
【翻訳:松尾直子】